末摘花 (源氏物語) (Suetsumuhana (The Tale of Genji))
末摘花(すえつむはな)とは、『源氏物語』五十四帖の巻名のひとつ。
第6帖。
若紫の並びの巻。
源氏18歳正月頃~19歳正月。
『源氏物語』に登場する女性の一人に対する通称。
不美人でありながらも生涯光源氏と関り続けた女性の一人。
「末摘花」とは、源氏がこの女性につけたあだ名で、彼女の「鼻が紅い」こととベニバナの「花が紅い」ことをかけたものである。
「末摘花」から「若菜 (源氏物語)上」まで登場。
あらすじ
乳母子の大輔の命婦から亡き常陸宮の姫君の噂を聞いた源氏は、「零落した悲劇の姫君」という幻想に憧れと好奇心を抱いて求愛した。
親友の頭中将とも競い合って逢瀬を果たしたものの、彼女の対応の覚束なさは源氏を困惑させた。
さらにある雪の朝、姫君の顔をのぞき見た光源氏はその醜さに仰天する。
その後もあまりに世間知らずな言動の数々に辟易しつつも、源氏は彼女の困窮ぶりに同情し、また素直な心根に見捨てられないものを感じて、彼女の暮らし向きへ援助を行うようになった。
人物
常陸宮と呼ばれるれっきとした皇族の一人娘だが、後ろ盾である父親を早くに亡くし困窮していた。
僧侶となった兄と国守に嫁いだ叔母がいるが、経済的な援助は見込めず、あばら家となった屋敷で年老いた女房たちと暮らしている。
極端に古風な教育を受け、頑固で一途、純真そのものの深窓の令嬢。
源氏物語で最も細かく容貌を描写された女性で、美男美女ぞろいの源氏物語の中では異色の不美人である。
「髪は素晴らしいが、座高が高く、やせ細っていて顔は青白い、中でも鼻が大きく垂れ下がってゾウのよう、その先は赤くなっているのが酷い有様」と酷評されている。
おとなしく実直な性格だが、滑稽なまでに古風で堅苦しく、世間知らずの面を露呈する。
昔気質で気の利かない性質の為、引き取られてからも源氏を「こちらが恥ずかしくなる」と度々閉口させた。
このように一見家柄以外に取柄のない彼女だが、頑迷さは純真な心の裏返しであり、源氏に忘れられていた間も一途に彼を信じて待ち続けた。
それに感動した源氏によりその後二条東院に引き取られ、妻の一人として晩年を平穏に過した。